目次:
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風車で安全に働くため業界標準のトレーニングを受けよう
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GWOトレーニングの修了書があることが必要な現場が増えている
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まず受講するならBSTから
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国内のトレーニング施設のリストはこちら
GWOトレーニングって?
風力発電業界で働き始めたけど、「GWOトレーニング」って言葉をよく聞くんだけど、必要な資格だったりするの?
いや、風力発電業界の標準となっている、安全管理のトレーニング全般が、一般的にこう呼ばれているんだ。
ちなみに、GWOというのはトレーニングの名前ではなくて、GWO (Global Wind Organization)という、主要な風力発電機器メーカーや発電事業者が結成した、非営利組織の名前だよ。
この団体が、風車での仕事に携わる作業員が安全に働けるよう、色々なトレーニングを開発して、業界の国際的な標準としたんだ。
でも、勤務先で安全教育を受けたよ。
それで十分じゃないの?
勤務先での安全教育はもちろん大事だけど、それは風車で働くことに特化したトレーニングではないよね。
風車での仕事は、高い場所や狭い場所での作業がつきもの。
電気が通っているから、火災が起きる可能性もある。
健康・安全面でのリスクはすごく高いし、人の命に関わるような危険な事故も起きているんだ。
どうして受けた方がいいの?
でも、普段と同じで、何かあれば救急車や消防車を呼べばいいんじゃない?
もちろん、救急救命のプロは呼ばないとダメだよ。
でも、風車が建っている場所、どういう所か知っている?
実際に行ったことあるかな?
まだ現場には行ったことないけど、洋上だったら文字通り海の上。
陸上だったら、市街地から離れてる印象だなぁ。
その通り!
風車って山の上とか海の上とか、すぐに救急救命隊員や消防士が到着できるような場所にないんだよね。
あと、携帯電話の電波が弱かったり、全然入らないエリアもあるんだ。
そんな場所で、しかも何十メートルの高さの所で、もし一緒に働いている人が怪我をしたり意識不明になったら、どうする?
救急救命の人たちは、「その場所は遠いので、最低でも1時間以上かかります」って言うかもしれない。
それまで何をすればいいかわかるかな?
う〜ん、自信ないなぁ…。
慌てて何もできないかもしれない。
そうだね、救急救命の人が来てくれるまで、怪我をしていたり意識不明な同僚を、何もできず見守ることしかできないかもしれない。
そしてその事故は、その人の今後の健康状態や、最悪の場合、命に関わることになるかもしれない。
あと、もし風車内で火事になったら、消防の人達を待つ余裕はないよね。
何の道具をどう使って脱出すればいいか、わかるかな?
道具を使っての脱出方法はわからないなぁ…。
でもすぐ脱出しないといけないような事故は起こるかもしれない。
そんな時、どんな対応が必要で、どうやって自分や傷病者を安全に風車から脱出させるかを知っていたら、怪我などで危機的な状況にある仲間を助けやすくなるし、自分の安全のためにもなると思わない?
もし自分が傷病者になった場合も、一緒に働いている人が、自分を助けるための知識・経験を持っていてくれると安心だよね。
確かに…。
そういう緊急事態に対応できるようなトレーニングを、自分も周りも受けている方が働いていて安心だね。
だから、業界標準のトレーニングが確立されたんだ。
このトレーニングを受講していることが、風車で作業をする人には欠かせないものになってるよ。
ということは、GWOトレーニングを受けないと、風車の現場での仕事はできないの?
GWOトレーニングが必須かどうかは、勤務先や現場のルールによってまちまちで、受講を義務づけていない現場もあると思う。
でも、GWOトレーニングを受講していることを、現場で働くのに必須の条件としている所は増えているよ。
必須じゃなくても、GWOトレーニングは、いざという時に、自分や自分と一緒に働く仲間を守るための知識と技術が得られるトレーニングだってことを、改めて強調したいな。
緊急事態が起きた時に、冷静に対処して、皆が一日の終わりに家に帰れる可能性を最大限に高めるために、受ける価値のあるトレーニングだよ。
どんなトレーニングコースがあるの?
でも、GWOトレーニングって言われてる中で、いくつかトレーニングの種類あるみたい。
全部受けないといけないの?
風車で働くなら、まず最初に受けてほしいトレーニングがこれ!
BST- Basic Safety Training(基礎安全訓練)
内容は以下の通り:
- Manual Handling(マニュアルハンドリング)
- First Aid(応急措置)
- Fire Awareness(火災予知)
- Working at Height(高所作業)
- Sea Survival(シーサバイバル)
このうちの、上記4つのモジュールのみのBST4と、シーサバイバルを含むBST5のコースがあるよ。
洋上にある風車で働くなら、シーサバイバルを含んだBST5を受けておこう。
他にもトレーニングの種類がたくさんあるみたいだけど、この基礎だけでいい?
もし風車の中での作業を日常的に行うなら、
ART - Advanced Rescue Training(上級救助訓練)
という上級コースも受講しておこう。
風車の中という狭くて障害物も多い場所で、どうやって人を救助するのか、救助のためにどんなツールを使うのか、より実践的に学べて、いざという時の対応力がぐんと上がるよ。
風車メーカーや、発電事業者によっては、BSTに加えてART受講も必須としている所があるよ。
内容は以下の通り:
- Hub Rescue(ハブ内における救助)
- Nacelle, Tower & Basement Rescue
(ナセル、タワー、ベースメントにおける救助) - Single Rescuer - Hub, Spinner & Inside Blade
(単独救助 - ハブ、スピナー、ブレード内) - Single Rescuer - Nacelle, Tower, Basement
(単独救助 - ナセル、タワー、ベースメント)
この2つを受けておけば、今後ずっと、色々な風車の現場に行って安全に仕事ができるってことだね。
いや、「今後ずっと」ではないよ。
BSTもARTも、修了書の有効期限は2年間。
つまり、この2年の期限が切れる前に、更新のためのトレーニングを受けないと、修了証は期限切れとなってしまうんだ。
- BSTの更新には、BST-R(リフレッシャー)
- ARTの更新には、ART-R(リフレッシャー)
をそれぞれ受講して、安全管理への意識を高く保つことを忘れないで!
慣れ、油断は事故の元。リフレッシャーを受けて、安全管理への気持ちを改めて引き締めよう。
確かに時間が経つと、せっかく覚えたことも忘れちゃって、いざという時に適切な行動ができないかもしれない。
その通り!
それに、しばらく現場で仕事をした後に受けることで、自分や周りの実経験を踏まえて、新たな気付きが得られたりもするよ。
他の安全教育にも興味があるなら、BST, ARTのトレーニング以外にも、GWOのトレーニングは色々あるんだ。
例えば、機械、電気、油圧作業、ボルト締めなどの時のリスクの把握、軽減など、安全に各作業を行うためのトレーニングなら、
BTT - Basic Technical Training(基本技術訓練)
そして、もっと応急処置に関して実践的なトレーニングを受けたいのであれば、
EFA - Enhanced First Aid Training(上級応急処置訓練)
というのがあるよ。これはBSTにあるモジュールのうち、First Aid(応急処置)の上位版なんだ。
なるほど。
日本で日本語でトレーニングが受けられるんだよね? どこで受けられるの?
GWOから正式に認められたトレーニング施設が国内にいくつかあって、もちろん日本語でトレーニングが受けられるから、このリストを参考にしてみて。